ヤニス・バルファキスさんというギリシャの財務大臣を務めた経済学者の方が書かれた本です。訳は関美和さん。

「経済」という私たちにものすごく身近である半面何だか難しそうなもの。

YouTubeの本の解説をするチャンネルで見て以来とても気になっていた本書。

毎日寝る前に少しずつ読み進めて1ヶ月くらいで読み終わった。

経済の本というより、人生の考え方や哲学や道徳の話のようだったのだ。

すっかり市場社会に飼い慣らされて、本質から目を背けていたことに気付かされた。

どこまでも利己的な人間という生物の残酷さ。

市場社会が誕生してから、合理性と富の追及を求める中で、地球の資源を根こそぎ消費する人類。
交換価値にばかり重きをおいて、他の犠牲は厭わない、地球にとっては恐ろしい破壊ウィルスのような存在。

止まらない環境破壊を目の当たりにすることの絶望感。

自然災害や破壊によって交換価値が生み出されてしまうシステムが出来上がっていて、それによって生かされている以上、すべてを割り切って考えることはできない。
そして、それはすぐには止められない。
全人類は地球を大切にしたいと根本で思っている(と思いたいが)、誰しもが大きな苦しみを抱えながら生きていくほかない。

しかし、私たち人間が本来持っている「思考する」「思いやる」という希望の光。

集団で生きのびることに成功し、地球の生態系の頂点に君臨した人類。
その根本は助け合いと思いやりという感情であったと思いたい。
この社会も多くの人が円滑に生活できるように成り立っているのは、「みんなで生き延びる」という大きなテーマがあるからに違いない。
それであれば、大きな問題も皆が同じ方向を向いて、解決に向かって歩み始める可能性も期待したい。

この本を読んで特に思った事は、私たちはもっと広い視点で物事を見なくてはいけない。
ということです。
思考を停止して批判だけするということはもうやめて、その先の、それはどういう価値や役割があるのだろうか、一見マイナスにしか見えないものにもプラスの面があるのではないか、という全体を見る視点を一人一人が持てたら良いなと思いました。

経験価値という概念

また、合理性を求める社会の中で、交換価値にだけ目を奪われていないか?
お金では換えられない、美しい夕焼けを見たり、壮大な自然に圧倒されたり、子供の成長を目の当たりにしたりなどの、貴重な素晴らしい体験を私たちは知っているはず。
たとえばボランティアであっても、本人の感受性によっては大きな経験価値があると思う。
そして、それによって人間性を成長させてくれる出来事にもなりうる。

とにかくすべてを極端な話にしないで、借金も社会を成り立たせるうえで必要なように。
見たくないものを直視できる強さを。

経済とは。人生とは。大切なことを深く考えさせてくれる、本のタイトル通りの美しく壮大な心を揺さぶられるとても素晴らしい本でした。